マー君(原作)
マー君は黙って雨に顔を向けていたが、怒りを堪えるように両手に拳を作り、小さな声で、そして次第に声を高め、突然怒鳴り散らした。

「僕を、僕を馬鹿にするなあああああ! 僕は誰よりも強いっ。だからみーんな僕に屈し感染してるじゃあないか!」

「それなら、なんで私は感染しないの? 強いんでしょ。誰よりも」

「う、うるさあああい! 僕を否定するなあああ!」

マー君は仮面を押さえたまま叫んだ。そして首を左右に振りながら、後退する。

「うるさい! うるさい! うるさいっ! 僕を、僕を−−」

追い討ちをかけるように雨が鼻で笑う。

「やっぱり−−」

次の言葉にマー君は絶叫した。凪もその言葉をしっかり聞き取った。

−−子供ね。

「黙れえええええ! 僕は子供じゃあないいい!」

そう叫ぶと、また黒い煙になり、父親の体の中に入っていった。

「父さん!」

凪がそう叫んだが、雨が制した。

「大丈夫。逃げただけよ」

雨の言う通り、だと思った時、突然父親が仮面越しに笑いだした。

「雨、君感染しないって言ったよね。でもね、もうすぐだよ。もうすぐなんだよ」

次の言葉を最後に父親の頭が傾いた。

「もうすぐなんだよ」

深く憎しみに満ちた暗い声だった。
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