マー君(原作)
<26>

「ハハハ、ハハ、ジョーン見なよ」

ジョーンは目の前に立ちはだかるマー君を見上げていた。目の前にはレベルJの感染者が立っている。

しかし、マー君と意思が通じているため、それが感染者であろうが、マー君と変わりはない。

マー君と呼ぶか、マー君信者(感染者)と呼ぶか、それに差異はない。


「まさか、こうなると思ってなかった? ねぇ博士」

ジョーンは仮面を付け、鎌の鋭い刃をこっちに向けるマー君を睨んだ。ジョーンは壁に背を押し付け、切られた脚を抑えている。

感染者は女だった。長い黒髪が仮面からはみ出し、胸が膨らんでいる。着ている白衣は血で染まり、もはや白い部分がほとんど見えなかった。

ジョーンはそんなマー君を見上げたまま、力なく呟いた。

「私を博士と呼ぶのか?」

「そうだよ。君は博士だった。僕を研究していた頃はね」

博士……。

ジョーンはため息をついた。見ると、マー君が鎌を掲げて、振りかざそうとしていた。

この私に向けて。

「そう、私は博士だった」

ジョーンは覚悟を決めた。あの頃の忌々しい記憶を消し去るために、死を受け入れる覚悟を。

「私は博士だった。君の言うとおり」

しかし、今は違う。ジョーンは振りかざされる鎌を見上げ悔やんだ。

過去を。自分を。

そして、自分がしたことを。
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