マー君(原作)
しかし、私とて、人間だ。幼い子供を実験体にして、何も感じない訳ではない。ただ、あの頃は自分に酔っていたのだ。

周りから「博士」そう呼ばれる度に、私は自分自信を褒めた。

実験では憎悪という感情を引き出すために、被験者の精神部分に手を加えることがあったが、後遺症を持つことや、もちろん死に至ることはなかった。

だからかもしれない。私が博士という枠から外れなかったのは。

あの日、私は虫かごを持った少年が実験室に連れてこられるのを見た。

彼は友達と虫を取りに学校裏に来ていたようだ。

しかし、不運なことにJCOの地下施設への入り口を見つけてしまったようで、急遽ここに連れてこられることに。

不運だと思ったが、私は気に留めなかった。どうせ実験体でしかないのだから。

それより、早く新しいサンプルが欲しくてたまらず、道理に反しているとわかっていながら、その少年――間宮を実験体にした。

しかし、それが間違っていたのだ。

私は気付くべきだった。

自分は博士ではないと。

自分は悪魔なのだと。

その日、実験は成功した。何年もかけてきたマー君プロジェクトがようやく前進したのだ。

間宮という少年を犠牲にして。

実験は成功したが、彼は生を失った。意識はなくなり、植物人間となってしまった。

初めての犠牲者だった。だが、それは――。

私がやったのだ。この悪魔の手で。

だから、私は捨てた。

博士という名を。
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