マー君(原作)
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昔は雫はいつも笑っていた。私は雫のそんな笑顔に励まされた。

あの全てを包み込むような笑顔に。

でも違った。

私は勘違いしていた。

雫は笑ってなんかいなかった。

泣いていたんだ。いつも一人で。私はわからなかった。

わかろうとしなかった。

「ねぇ、お姉ちゃん見てよこれ。パパが買ってくれたんだ」

雫は満面の笑みで買ってもらったパソコンを私に見せる。

「雫だけずるーい。私なんかなーんにも買ってもらってないよ」

「えへへ」

雫はパソコンの前に立ち笑う。私はそんな妹の笑顔だけ見れればよかった。 

満足だった。

他には何もいらないと思った。

でもいつしか、私は雫がわからなくなっていた。

だって、わかろうとしないんだから。

だから私は決めた。

雫をわかろうと。

もう一度あの笑顔を取り戻そうと。

なのに--。

「へー、お姉ちゃん来たんだ。よくここがわかったね?」

雫は変わってしまった。マー君に。

雨は背を向ける雫に銃を向けながら、ゆっくり近づいた。雫がいる部屋は広く薄暗い。真ん中に人が入った巨大なカプセルが見える。その図上に巨大モニターも--。
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