Ending Note
「もしよかったら、今晩は奥様を病室に泊めていただいて結構ですよ? 明日の朝までに葬儀屋さんに来ていただければ……」
なんと良心的な病院なんだろう。
病院で亡くなると呼んでもいないのに葬儀会社の人間が来る、という話を聞いたことがある。
もしくは、亡くなった瞬間に患者はただの遺体になるのだから、病院側はベッドを少しでも早く明け渡してほしいがために、さっさと出て行ってほしい、とも。
「それじゃあ……お願いしてもいいでしょうか。私も泊まりますので」
「分かりました。では今から、奥様をお風呂に入れてさしあげたいと思いますので……よろしいですか?」
やんわりと病室を出ていくように促されて、あたしたちは外に出た。
「あの看護師さん、いい人だね。ママのこと、まるで生きている人のように扱う」
いまだ涙を一滴もこぼさず、呑気なことを言うあたし。
パパはもう、そんなあたしを怒る気にもなれないのか力ない声で言った。