不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
「こんな私でよかったら…」

最悪の状態の彼女を知っていた俺に向かって彼女は謙虚にそう言ってくれた。

「君を待っていた。君じゃなきゃダメなんだ。

どんな時でも、君は君で、そんな君だから、俺は君がずっと欲しかった」

その言葉にほのかは涙を流して「アリガトウ」と答えてくれた。

その時の言葉が「アイシテル」ではなかったことが俺にとってはショックだったが

ほのかと初めて気持ちが通い合ったと思えた瞬間だった。

愛しい人に向かって「愛してる」と言えることが、ただただ俺にはうれしかった。

そしてあの夢で懇願してから彼女の声が聞こえたのであれば

これ以上能力に頼るのはよくないと思い、結婚を機に自ら他人の感情を読まなくなった。

だが、今まで使えなくなったかどうか確認したことはなかった。

色々な困難な場面でも基本普通の人間のように乗り越えてきた。

ほのかとは色々な事があったとしても、普通に暮らしたかった。

便利な能力ではあったが、ほのか以上に欲しいものはなくそれが手に入った今、

彼女にそんな卑怯な手を使っていたことを知られたくない気持ちが強かった。

おそらく一緒に暮らせば色々な場面で違和感を感じるようになり、

いつかこの能力がばれるときがくる。それが俺にとってはもっとも怖かった。



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