キミと生きた時間【完】
『入学式の日から……ずっと好きだったんだ。一目ぼれっていうのかな……?俺と付き合ってください』
少し照れくさそうに告白してくれた田中君。
『ごめんなさい。田中君とは付き合えない……』
『マジか……。誰か好きな人がいるとか?』
『そういうんじゃないの……』
『じゃあ、どうして……?』
『ごめんね……』
『俺のことが嫌いだから?』
『違う。嫌いじゃないけど……、でも付き合えない。ごめんなさい』
あたしが告白を断った理由をしつこく尋ねる田中君。
――――親友の美奈子が田中君を好きだから。
そう田中君に打ち明ければ、美奈子を裏切ることになる。
あたしが勝手に美奈子の気持ちを代弁することなんてできるわけがない。
あたしは田中君の告白をあいまいな形で断るしかなかった。
そして、田中君から告白されたことを美奈子に話すことができなかった。
きっと、そんなあたしの判断が間違っていたんだ。
だから……あんなことに……――。
『里桜、田中君から告られたってマジ?ねぇ、嘘だよね?』
『えっ……?』
それから数日後、風の噂でその事実を知った美奈子に問いただされた。
『応援してくれるって言ってたもんね?里桜、あたしのこと裏切ってないよね?』
『……――っ
『ねぇ、里桜。何とか言って!!』
もうごまかしきれない。
『……ごめん』
それを認めると、美奈子の表情がみるみるうちに変わった。
『ハァ!?マジ最低。アンタ、あたしが田中君のこと好きなの知ってて彼にこびうったんじゃないの?』
濡れ衣をきせられ、『違う』と弁解しても美奈子の怒りは収まらなかった。
『美奈子、お願い!あたしの話も聞いて!!あたしは美奈子のことを裏切るようなことなんて……――』
『もういい。アンタのこと信じてたのに……。絶対に許さないから』
美奈子は目のふちを怒りで赤く染めてあたしを睨んだ。
そして、結局噂には尾ひれがつき、最後には
『浅野里桜から田中君に告白した』となった。