本音は君が寝てから


「ご本人もとても素敵。格好いいですよね、チョイ悪系で。奥様が羨ましいです」

「はは。それはどうも。でも残念ながら俺は独身なんで」

「えーそうなんですか! 勿体無い。テレビをご覧のみなさーん。ここにこんなに素敵な男性がいますよー」

「恥ずかしいから止めてくださいよ」

「だってぇ。こんなに素敵な男性なのに勿体無い。結婚なさらなかったのはなぜですか?」


素直に疑問のまなざしを向けられても困る。
何故っていわれても、相手がいなかったからだろうとしか思えない。

俺は曖昧に笑って誤魔化すことにした。


「なんででしょうね。仕事に夢中になりすぎて。気がついたらこんな歳でした」


照れ隠しに首元に手を伸ばし、長めにしている襟足を掻く。


「モテモテで独りに選べなかったんじゃないですかぁ?」


レポーターはくすくす笑うと取材の締めに入った。
俺も、宣伝がてらランチバイキングや、夜のコースの説明をし、取材を終える。


「ありがとうございましたー」


取材陣は早々に片付けに入っていく。俺も出した料理を片付けないと、一般客が入ってくる時間になるな。
< 2 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop