本音は君が寝てから


「地べたに座るような女は駄目ですか」

「駄目じゃないけど。衛生的ではない」


こういうセリフだけは即答出来る俺。
すると彼女からはズズッと鼻をすするような音がする。


「やっぱりそういうの気にするんだ、香坂さん。おうちとか綺麗じゃないと駄目な人ですか?」

「そう……かな、割と」

「じゃあ私じゃ駄目だ。私家庭的じゃないですもん。洗濯だって2日に一度ですもん。朝食は夕飯の残りですもんー!」

「お、おい。落ち着けよ」


森宮さんはボロボロと涙を流し始め、またしゃがみこもうとするから、俺は肩をつかんでそれを制する。

いつものきちんとした態度は彼女から消え、まるで駄々をこねる子供のようだ。

どうやらかなり酔ってるらしい。


「私また振られるんだー。えええん」


森宮さんは綺麗な瞳から溢れる宝石のような滴を、ためらいもなく存分に流し続ける。

参ったな。
酔うとこんなに感情駄々漏れになる人だったのか?


「あのさ。俺の話を聞いてくれないかな」

「聞いてますー。でもダメでしょ。私間違いなくあなたより料理も下手です。掃除は好きだけど、仕事してたら毎日は無理だし。そんなピカピカじゃなくても気にならないし。仕事は辞めたくないー」

「料理は俺のほうがプロなんだから上手くて当たり前じゃん」


だけど。
こんな調子の方が俺も話しやすい。

いつもなら緊張して考えてる端から言葉が消えていくのに、この間合いでなら言いたいことがなんでも言えそうだ。

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