本音は君が寝てから
「でも」
「きれい好きって言ったって俺だって今は毎日掃除してるわけじゃないし。触れるものだけ清潔だったらそれでいいっていうか。洗濯が二日に一度なのは一人暮らしだからだろ? 俺だって三日に一度だ」
「……本当?」
まくし立てた俺の顔を見ようと、森宮さんが首を急角度に曲げながら潤んだ瞳に俺を映す。
「本当だ。だからとにかく俺の話を聞いてほしい」
「聞いてます」
「いや、聞いてない。まず落ち着いてほしい」
「だって落ち着くってどうすればいいの。こんな醜態見せちゃったのにー!」
うわああん。と泣き叫ぶ彼女。
落ち着かせるにはどうすりゃいいんだ。
映画もドラマも見ないし本もあまり読まない。
こんな時の正しい行動とはどういうものなんだ。
誰か教えてくれ。
頼む相本!
しかしこの状況で誰かが教えてくれるはずもなく、とりあえず俺は彼女の口を右手で塞ぐ。
「もがっ」
指の間から漏れる彼女の息。
「とにかく、静かにしてくれ」
小さく頷く彼女は瞳を悲しそうに歪めて。それを見て、俺は後悔する。
塞ぐ手段を間違えた気がしないでもない。
こういう時は抱きしめたりキスしたりするのが大人の男か。
悩んでいる間に、指に濡れた感触が落ちる。
ぎょっとして思わず手のひらを外すと、その隙間から彼女がこぼした。