本音は君が寝てから


「……おやすみ」


頭を撫でて立ち上がろうとすると、服の裾を掴まれる。


「それだけですか」


しっかりした声に驚く。
ベッドの彼女はまだ顔は赤いが、目はしっかり開いていた。


「え? 起きてんのか?」

「隆二さんが言ってたの本当でした」

「は? 相本?」


何でここで相本の話が出てくる。
しかも何で名前で呼んでんだよ。


「香坂さんは照れ屋だから分かりにくいよって」

「そんなこと言ってたのか?」

「だから寝たふりをしてみろって」

「……!!」


じゃあ、さっきのは寝たふりだったのか?
あのこっぱずかしいセリフの数々を。


「じゃあ、……聞いてた?」

「はい。とっても幸せでした」


小さく頷く彼女を、恥ずかしすぎて見ていられない。

マジか。あんな臆面も無く好きだと連呼してしまったあれを聞かれたのか。


「……勘弁して」

「どうして? 私嬉しかったです!」


彼女の瞳は酔っ払い特有の潤みがあり、それが妙に色っぽくて、俺は生唾を飲み込んだ。


「夢見てるみたいでした。これ、すっごく私に都合のいい夢なんじゃないかなって」

「夢ではないよ。確かに言った」


流石にそこは否定しないけど。

おのれ相本。
いつか仕返ししてやるぞ。


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