恋愛音痴と草食
あの人は本当に俺を男として見ていない。常日頃からの態度もそうで、たまに泣きたくなるくらい身に染みている。
たぶん俺だけじゃなく俺以外の男も恋愛対象の男として見ようとしない。
…だから彼氏出来ない訳だよ。
電話で『助けて』という佐倉さん流のメッセージに慌てて馳せ参じてみると、佐倉さんはのんきに俺を呼んだ。
すごい所にいるなと思いながらそちらに近づくと、ひらひらしたスカートを穿いていたくせして脚立のてっぺんにまたがって座っていた。
…何してるんだ、もう。
佐倉さんは自分が女だってことすっかりどこかやってるんじゃないだろうか……まったく。
脚立から降りる際ホントに一瞬白い太ももが見えた。思わず 見えた とか正直嬉しくなったから自分がイヤになる。…でも、これは佐倉さんだって充分悪いと思う。
あんまりそういうことしていると、俺みたいな普通の男はそんなつもり無くてもついつい頭の中でエロい妄想とか浮かんだりするんだ。
……俺は俺含めてあの人をそんな妄想の中に登場させたくない。
『あなた女性でしょ?』
だから、そういった意識を少しでも佐倉さんがもってくれないと。
やんわりと駄目だしすると佐倉さんの顔が真っ赤になった。
……かわいいからもう許してあげることにした。
あとは、少しだけ、俺を売り込んだ。
もっと俺を使って欲しいから。
『俺を頼って下さい』
たまに痛々しくみえる。佐倉さんが頑張り過ぎるから。