恋愛音痴と草食
 ネオン輝く繁華街をこうして並んで歩いていると見知らぬ他人には恋人のように見えるのかもしれない。何となくぎこちなさとフワフワ浮き足だつような感覚に少し頭がぼんやりしてくる。

 博之はコンビニの袋を手に提げながら結子の話を聞いていた。袋の中身は軽く祝杯兼ねぎらいをするための数本のアルコールとつまみ。

 ゆっくりまったりこうやって街角をぶらつくのは悪くなかったが、 (風俗に)行って来なよは無いだろうと思う。

…佐倉さんの彼氏候補に少しくらいは俺をのせて欲しいんですよ、こっちは。

 少し浮かれ気味にキョロキョロ見ている佐倉さんは隣で俺がじっとり恨めしげに見下ろしているのにまったく気がついていない。

 自分のアピール不足は認める。人一倍口下手だしあんまり表情や態度に感情は出ない性質だから仕方ない。でも、この人の鈍さはどうだ。何だか勝ち目が無い。

…そもそもこの人ときたら自分には恋愛というものがたぶん無いみたいと自虐するでもなく普通にそう話して疑いもしない。当人いわく恋愛のセンサー的なものが効かないらしい。

この人はどうしたらセンサー取り付けてもいいかなと思ってくれるのだろう。

 博之はそっとため息をついた。ため息は華やかなネオンの光に溶けこむ。

 袋の中でアルコールがカチャカチャと音を立てていた。

…博之はゆっくりと結子と並んで歩く。

 結子が話しかけてくるのを博之はきちんと言葉数が少ないながらも返した。

 傍らの博之を見上げて結子が楽しそうに笑うのがとてもまぶしく見えた。

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