恋愛音痴と草食
 博之は無言でその続きを促した。

「…新しめの子達は何かあるとひろちゃん達を頼るんだよね。私に来ることなんてまず無いし。そればかりか私に聞いた後でひろちゃんに確認に行くしさ。佐倉さんに言われたんですけど加賀見さんはどう思いますかって。なんつーか立場ないよね。もおさ、新人さん関連全部キミがやればいんじゃないの?」
酒がまわってきてるのか愚痴が混じりだす。

「佐倉さんに怒られたくないってだけですよ」
 フォローのつもりのセリフはまたしても結子のお気に召さなかったらしい。

「ナニそれ?佐倉さんは怖いからイヤだけど加賀見さんなら受け入れますってこと?」 
とどこか挑戦的な視線で加賀見を見た。

 ほろ酔いな結子に絡まれているなとは思うがこの人だけには、ま、いいか と博之はいつもゆるすことができる。プンスカぶんむくれる姿が結構可愛く見えるあたり加賀見自身不思議で仕方無い。

「佐倉さんは始めはかなり厳しい態度で関わるじゃないですか」
 
「学生気分のまんま職場に居られると困るからね」
 そうきっぱり言う彼女はまぶしい。

「社会人だって立場を認識しきれないままだと一緒に仕事するみんなも本人もあんまり楽しくないでしょ?」
 長く関わらないと彼女のこういった考えは見えてこないかもしれない。

「…とかいって結局見捨てないくせに」
ようやく酔いがまわってきたらしく博之が珍しく皮肉げに結子に茶々を入れた。

「……だってかわいそーでしょ」
心当たりがたくさんあるのだろう、結子はスルーッと視線を明後日の方向にとばした。

「いいじゃない別に。あたしが鬼ババでひろちゃんが救い主でうまくまわるんならその方がいいっしょ」

博之はハッとして結子を見た。
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