Sympathy For The Angel
ベッドの上に鍛えられた細身の上半身を起こし、樹は天井を仰いで溜め息をついた。



「24日にもお前に会えねーんだよな」

「……忙しいの?クラブ」

「クリスマスイベントがあるから、どうしても抜けれねぇ」

「そっか。残念だけど我慢するよ。……でも枕営業はもう止めてよね?」

「やってねぇよ」

自嘲気味に笑った樹が枕の下から何かを取り出した。


「会えないけど、これだけは渡しとく」



ほら、と言って樹が差し出してきた持ち手のついた小さな紙袋。


「え……?これ……」

「クリスマスプレゼント。当日に渡したかったけど、しょうがねーよな」


それにはブランドショップのロゴが入っている。


「……開けても、い?」

「ああ」

そっと囁くように樹の耳元に寄せて伺い、許可を得た。


袋の中に入っていたのは、白い小箱。

蝶番がついたその小箱の蓋を開けてみると―――。


「……リング……」

「ペアリング。ちょいゴツいヤツ選んできた」


幅広の樹のリングと私のリングを重ねると、文字が現れた。



樹の名前と私の名前が、重なったリングに刻み込まれている。



「……どうしよ。すごい嬉しいんだけど」

「馬鹿。何泣いてんだよ」

樹が愛しげに私の頭を寄せて髪を撫でると、涙が止まらなく溢れてきた。


「大事にする……。このリング、絶対離さない……!」

「他の男に揺れんじゃねーよ。お前は俺のもんだ。渡さねぇから、誰にも」


力強い樹の一言で、私は強くも弱くもなれる。


その樹の回りには人が集まり、樹を支えて支えられて自分の居場所を築いていく。


紅蓮や、蘭のメンバー達のような。


人が集まる。


その隣に居られること。




それって幸せな事だよね?






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