Sympathy For The Angel
「髪を乾かせよ。風邪引くだろ?」

ドライヤーがないので仕方なくストーブで二回目の洗髪を乾かした。

「うー。外寒いのかなぁ。……って雪降ってるじゃん!今……10時?もうそんな時間?」

「積もる前に帰った方が良さそうだな。家まで……」


樹がそう言いかけた時に私の携帯が着信を知らせた。




もしかして美優紀かも、と思って携帯を確認すると……。


「八神諒……」


思わず呆然と呟いてしまった。


その瞬間険しく吊り上がる樹の目。



「……貸せ」

樹は低い声で唸ると、私の手から携帯をひったくった。


「……手前ぇが八神諒か」

怒気を放った樹が低い声で相手を威嚇する。

「人のオンナに手ぇだしてんじゃねぇ。ヤるぞ手前ぇ」

この場合のヤるは『殺』という意味で合ってんのかな、と朧気に考えた。


一方的に脅して通話を切ると、携帯を私に放って寄越した。


「何だって?八神諒」

「知らね。帰んぞ」



無意識に私は左手の薬指に填めたリングを撫でていた。

その手で樹の右手を掴むと、痛いぐらいに握り締め返される。




「……アイツには、気を付けろよ」



そのまま家まで送ってもらったが、去り際に揺れた樹の一言が胸に刺さった。


まるで長く細い棘のように………。







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