【続】朝の旋律、CHOCOLATE


私は、今日やらなくても間に合う部品を、旋盤に乗せて。

スイッチを入れた。


哲が、どう話すのか、聞きたくない。



モーターの回る音と、いろんなものが連動する、音。

鉄の部品に、ドリルで穴を開ける、音。


ゆっくり過ぎても、急ぎ過ぎても、ドリルの先端も品物も焼けちゃうから。

ほら、“焼きが入る”とか、言うでしょう?


熱してから冷やすと、金属は硬くなる。

だから、適度なスピードと力加減で、ドリルを進めて。





「……だから、あんた誰?」


哲の、不機嫌そうな声を聞かないように、慌てて次の品物を、乗せた。




私、訊いたのに。

子供とか、籍の入ってる人とか、ちゃんと別れてない彼女とか……いませんか、って。





「…嬢ちゃん」

「…………」



シゲちゃんが珍しく、私の手を止めて。

危ないから、ちょっと水でも飲んで落ち着いて来な、と。

優しく、優しく。
奥の休憩室まで、背を押した。



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