椿山亜季人の苦難日記
「日和だけには話すから。」




「私、アキさんが大事なんだ。」


呑み込まれそうなくらい、黒くて強い目をして、


「好き、という言い方が正しいのかわからなくってさ…大事なの。」


風が、千歌の黒い髪を霞める。

「理想とは、かけ離れてるけど…でも不思議と、守ってほしいとは思わない、あのままでいい。」



「私も自分のままでいる。そのままでぶつかりたいんだ。それが可愛くないって言うならそんなヤツ、こっちから願い下げよ!」


その強い瞳に、私は見惚れていた。大切な友達が、自分の道を決めることが出来たことが嬉しくて、


「自分の気持ち、やっと分かったから、日和には聞いて欲しかったんだ。」


そして同時に、眩しく思った。正直な気持ちを、話してくれた、そのまっすぐな想いを。


「話してくれて、ありがとう、千歌。」


ニコッと笑う千歌を見て、チクッと胸がいたんだ。



私の大切な気持ちを、話す勇気がなくて、ごめんね、千歌…。


< 74 / 169 >

この作品をシェア

pagetop