空の下の約束
待ってよ、今日退院なのに…


「ハア…ハア…ハア…」


胸を押さえてうずくまる。


何でもない…走ったから息切れしただけ…


「だ、大…丈夫」


自分に言い聞かせ、壁に寄りかかりながら息を整えようと頑張った。


少しずつ楽になってきたものの、逃げてきた自分に情けなさが蘇ってくる。


「逃げなきゃ良かった…」


ボソッと呟くと横から聞き慣れた声が聞こえてきた。


「本当だ…ハア…逃げるな…ハア…ハア…」


「キャァ~!!」


ビックリして尻餅をついてしまった。


「おいおい、これ以上年寄りに力使わせないでくれよ」


そう言って尻餅をついた私の隣に腰を下ろした。


まだ少し息が上がってる私を観察しながら、脈を図ったりと私の調べていく。


「少しみだれてるね…苦しくない?」


「ハア…大丈夫…ハア…落ち着いてきたから…」


それからしばらくは2人とも無言で薄暗い中座っていた。


その沈黙を破ったのは星野先生。


「あのさ、僕は医者だからいいけど、ここ
…霊安室なんだよな」


そう言って私の右側の奥の扉を指さす。


それにつられて顔を向けると本当にそうで…


「キャァ~!!」


再び悲鳴と共に今度は星野先生に抱きついてしまった。


「アハハハハ」


星野はそんな私を抱き止めるわけでも突き放すわけでもなくただ笑っていた。
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