恋愛ターミナル


ピンポーン。ピンポーン。

遠くで音が聞こえるけど、自分の家のインターホンの音と違うからか、睡魔の方が勝ってしまう。
ガチャリとドアが開く音を聞いても、まだ目は閉じたまま。


「あら。意外に早いのね」


梓のそう言った声が夢の中で聞こえてきた。


あー……もしかして、梓の彼かな。ヨリ戻しにきちゃった?
マズイな、私。完全にお邪魔じゃない。
だって梓の彼は……いわゆる妻子持ちなわけだから、会う時間も限られてるだろうし。


もぞもぞと、掛けてくれていたブランケットごと動いて、玄関の方向に背を向ける。
足音がどんどん近付いてきて、それがぴたりと止まった。


「凛々」


呼んだのは、梓じゃない。
この声は――――徹平。


「なっなんでっ! 梓が教えたの!?」


ガバッと起きた私を驚いた目で見て、すぐに、やれやれといった表情で梓は答える。


「あのねぇ……そんなことしなくたって」
「お見通しだ」


梓の言葉に続けて徹平が言った。


なによっなによっ! なにそんな、『なにもありませんでした』みたいな顔してそこに立ってるのよ!
なんで全然平気な顔して迎えに来てるのよっ。


「じゃ、世話になったな、仁科」
「いーえ」
「ちょ、ちょっと!!」


ずんずんと梓の部屋に上がり込むと、起き上がった私の手を掴む。
ひさしぶりに触れられた徹平の手は熱い。

こんな突然の襲撃で、昨日固めた決意がぐらぐらしたまま。
心の準備も言葉の準備もしてないっ。


「私、メイクもなおしてないし、荷物もっ」
「メイクなんて普段たいしてしてねぇだろ。荷物もこのカバンだろ? 昨日のまんまで寝やがって」
「あ、あずさ―――」


徹平は私のカバンを肩に掛け、そのままの勢いで玄関にむかい、靴を履く。
慌てて私も靴だけは! と履いたが最後。あずさに助けを求めたけど、手をひらひらと振ってニヤけながら見送るだけだった。


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