恋愛ターミナル
*

ピンポーン。ピンポーン。

遠くで音が聞こえるけど、自分の家のインターホンの音と違うからか、睡魔の方が勝ってしまう。
ガチャリとドアが開く音を聞いても、まだ目は閉じたまま。


「あら。意外に早いのね」


梓のそう言った声が夢の中で聞こえてきた。


あー……もしかして、梓の彼かな。ヨリ戻しにきちゃった?
マズイな、私。完全にお邪魔じゃない。
だって梓の彼は……いわゆる妻子持ちなわけだから、会う時間も限られてるだろうし。


もぞもぞと、掛けてくれていたブランケットごと動いて、玄関の方向に背を向ける。
足音がどんどん近付いてきて、それがぴたりと止まった。


「凛々」


呼んだのは、梓じゃない。
この声は――――徹平。


「なっなんでっ! 梓が教えたの!?」


ガバッと起きた私を驚いた目で見て、すぐに、やれやれといった表情で梓は答える。


「あのねぇ……そんなことしなくたって」
「お見通しだ」


梓の言葉に続けて徹平が言った。


なによっなによっ! なにそんな、『なにもありませんでした』みたいな顔してそこに立ってるのよ!
なんで全然平気な顔して迎えに来てるのよっ。


「じゃ、世話になったな、仁科」
「いーえ」
「ちょ、ちょっと!!」


ずんずんと梓の部屋に上がり込むと、起き上がった私の手を掴む。
ひさしぶりに触れられた徹平の手は熱い。

こんな突然の襲撃で、昨日固めた決意がぐらぐらしたまま。
心の準備も言葉の準備もしてないっ。


「私、メイクもなおしてないし、荷物もっ」
「メイクなんて普段たいしてしてねぇだろ。荷物もこのカバンだろ? 昨日のまんまで寝やがって」
「あ、あずさ―――」


徹平は私のカバンを肩に掛け、そのままの勢いで玄関にむかい、靴を履く。
慌てて私も靴だけは! と履いたが最後。あずさに助けを求めたけど、手をひらひらと振ってニヤけながら見送るだけだった。


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