恋愛ターミナル

バタンと閉まった玄関をいつまでも見てると、徹平は手をまだ掴んだまま私を引く。


「いつまで見てんだよ。ほら、行くぞ」


い、行くってどこへ……。
全然見当もつかないんですが……。


怪訝な顔をして徹平を見るけど、徹平は何にも言わない。

ただ、私の手をしっかりと握り、カバンを持って、私を先導して歩く。
昨日の今日で、なにを話していいかわかんないし、徹平もなにも言わないからひたすら二人の間は無言。


その無言が気まずいけど、私は昨日の件でへそを曲げてるんだから、そっちから譲歩しなさいよ! そんなことを心で思って、徹平の後頭部を睨みつける。


すると、タイミング良く徹平が振り向くもんだから、思わず謝りそうになるくらいに驚いた。


「昨日はびっくりしたよなぁ」
「――はぁ?! なにそれ! それだけ?!」


こんなに悶々としてるのに、なんなのこいつ!!
なにあっさりと、「びっくりしたよなぁ」とか言っちゃってんの?!
まさか、実は笑顔で浮気出来るタイプじゃないでしょうね?!


「世の中には店なんてたくさんあんのにさ。結局おれたちって一緒になるんだな」


ど、どうしたの、徹平……。
普段は言わないようなことをぺらぺらと……。もしかして、本当に昨日はあの子となにかあったんじゃ……!


「信じらんないっ」


その先を想像して、怒りと悲しみが入り混じった私は声を上げて立ち止まった。
動かなくなった私を見て、徹平は首を傾げる。


「浮気だけは絶対にしないと思ってたのに!」




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