恋愛ターミナル
だって、結婚相手っていっても、所詮は他人なわけだし。
生活を共にしたら、あの親のようなことにならないとは言い切れない。
まして、私は“その”両親の子供だし。
でも、この前結婚したいずみや、いつか落ち着くんであろう凛々が結婚することは私の価値観を押し付けたりしない。
きっと、奥さんになるのが“私じゃない”から、きっと上手くいく。
要は、私自身が問題なんだ。
「面白いとかそういうんじゃなくてさ。梓のこと、ちょっとでも知りたいんだよ。私は」
大真面目な顔で凛々が言う。
こんな友達がいるから、やっぱり、私は誰かと一緒になんかならなくても十分満たされそう。
「……ありがと」
「大体、梓はこう見えて一途なんだし、美人なんだからさー。あとは男の見る目なのよっ」
「『見る目』、ねぇ」
「あ! 今日ね? うちのクラスの男の子なんだけど、一週間くらい、なんだかの理由でお母さんが不在だって言って。それでお父さんが仕事切り上げて迎えにきたんだよ? しかも今週ずっと来るんだって!」
「へぇ?」
「だからさ! そーいうことよ!」
なんの前置きもない、脈絡のない話に、思わず「はぁ?」と声を上げてしまった。
「そーいうこと」ってどういうことよ。
凛々って、よく子供の先生やってるよなぁ。あ、凛々が子供っぽいから人気あるのか。
私の、全然わからない、というリアクションに不満だったのか、凛々が人差し指をたてて、補足し始める。
「だーかーら! そういう家庭的な、協力してくれるような男を見つけるの!」
自信満々に言う凛々を見て、テーブルの上の灰皿に視線を落として考える。
家庭的な、ねぇ……。
別にそういうの、嫌いとか避けてるわけじゃないんだけど、そんな男寄ってもこないし。
第一、そんな男は結婚願望強そうで、ハナから私と合わないわよ。
「んー考えとく」
私は凛々の言うことを適当にあしらって、その後はただひたすら凛々の話を聞いて飲んだ。
元彼のことなんか、これっぽっちも思い出すことなく。