恋愛ターミナル
「は?」
たまごやき入れて、たまごやきじゃないってどんな現象?
なに? なぞなぞ? 自慢じゃないけど、私頭カタイから、そういう類のはものすごいニガテ。
頭の中が疑問符でいっぱい。
助けを求めるように、しゃがんだままのお父さんに視線を向けると、薄らと赤い顔をしていた。
そして、視線を横に向けて、ぼそぼそと補足する。
「……や。その、うちにたまごやき用のフライパンもなかったから……巻くこと出来なくって。ちょっとだけ、うすっぺらーい……」
「ちょっとじゃなかったー! スバルのせいでバカにされたんだぞっ」
「んなもん、無視しろ、無視!」
「無視」って言葉、子供に伝わるの? ていうか、教えていいの?
この状況で、「じゃ……」なんて帰るわけにもいかなくて。
私は場違いだと思いつつ、二人のやりとりを見守ることになっちゃってた。
「おべんとうだけじゃないもーん」
ぐすぐすと泣きながらなにやらまだ不満を訴える気だ。
その子の言い分て、どんな内容なのかな? なんて興味がちょっと湧いた私は、真剣にその子の話を聞く。
「きょうはスポーツのひだったのに、おきがえせんたくわすれてたし。えんそくのふうとうもみんなせんせいにあげて、おれだけだったもーん……」
「いや、だってよ。急にそんなこと言われても」
「うんどうかいのいしょうも、『アイロンかけてもらってね』ってせんせいいってたしー……あとは……」
「えぇ?! たったこの一週間で、そんなにあんの?!」
……なんか、大変そう。子供がいるって、こういうもんなんだ。
今まで付き合って来た男にも、同じくらいの子がいたりしてたはず。
でもきっと、なんにも手伝うこととかしてなさそうだったな。
「ねぇ。おねえさんのおうち、どこ?」
「えっ?」
「こら! 5歳児がナンパすんな!」
「ナンパってなにー?」と聞き返されたお父さんは、ごにょごにょとなにやらごまかしながらレジへと向かっていく。
私も買うものはもう終わったので、その後をついて行った。