恋愛ターミナル
吸い寄せられるように玄関へ続く廊下を歩き、ドアノブに手を掛け、そっと回す。
キィ、という音を上げて開かれたドアの奥には、初めて見る私服姿の彼だった。
「――――な、んで」
私の言葉が言い終わるや否や、平岡さんは厚みのある手をドアに掛け、そのまま玄関に押し入ってきた。
バタン、と重みのある振動が足に響く。
見上げると真剣な瞳の平岡さんが目の前に立っていた。
「今の、彼氏?」
……は? 「彼氏」? 一体なんの……あ。もしかして、徹平のことを――。
まるであの、唇を重ねたときのことを思い出させるシチュエーション。
同じ場所、同じ瞳。違うのは、平岡さんが作業服じゃないことと、私の明確な気持ち。
「入ってったの見ちゃって。で、出て行くときは別の女の手、握ってたから」
じりじりと詰め寄られてる私に靴を脱ぐ余裕もなくて、もう後がない。
少し怒ったようにも取れる平岡さんの顔を、瞬きもせずに見つめ返す。
無精ヒゲのままの彼が、私の顔に影をつくるように近づいてくる。
「浮気? 修羅場? この前の『慣れてる』って、こーいうこと?」
「はっ?」
そこまで言われると、つい啖呵を切るように返してしまった。
だって、なんでそんなふうに言われなきゃなんないの。
平岡さんなんて、可愛い大事な奥さんと、子供がいるのに。
そもそも何しにここにきたの?!