恋愛ターミナル
「もう! 梓が今までそういうことするから、ヒヤヒヤして――――あれ……? じゃあ、正真正銘、結婚も子供もない彼……??」
「そういうこと」
「ええ! あれだけ、既婚者と利害一致するような話してたのに?!」
「まぁまぁ。凛々。いいじゃない。梓だって心境の変化があってもおかしくないし!」
「まー亜美も『心境の変化』ってやつで、ものすごい速さで晃平さんとくっついたからねぇ」
きゃあきゃあとひと際店内で盛り上がるテーブルに、近くの客の視線が痛い。
3人は口を閉じ、身を小さくして目を見合わせ、笑った。
「私は二人と違って、『結婚』とかって、正直まだ全然考えられないけど。でも、ゼロじゃないのかな、って思うようになってきたよ」
昴を思い出して、穏やかな表情をした梓がぽつりと言う。
「私も、『結婚』は自分の理想通りに! って決めつけてたけど、なんか理想とか、そこまでこだわらなくってもいいんだなぁって今思ってる」
亜美は両手で頬づえをついて、テーブルに置かれたケーキを眺めて微笑んだ。
「――私はやっと『結婚』出来そうだけど。でもきっと……いや、絶対それで終わりじゃないって気付いたよ。結婚したって、徹平とケンカして仲直りして……って続いてくんだよねっ」
左手を見つめてそう言うと、凛々はその手をぎゅっと握って笑う。
『どうせ終点がないのなら、今の想いをずっと忘れないように笑っていたい』
――――3人の恋愛は、何度も折り返して続いていく。
―おわり―