恋愛ターミナル


約束当日の金曜日。
いつもと同じ仕事なのに、どこかやっぱり集中できなくてそわそわしながら終業時間を迎えた。


『場所ぉ?! 別にどっちでも一緒じゃない! どこにいたってそうなるときはそうなるわよ!』


あのあとの2度目の電話で凛々はそう大きな声で言ってた。

でも、電話を終える直前に、『ま、男の家にいくなんて、食べられに行くようなもんだし、亜美の家にしたら?』なんてことを付けたして言われたものだから、私はそれに素直に従った。

『まー食べられたいなら別だけどねぇ』なんて下世話なことまで言ってたけど。


そんな言われるほど、飢えてなんかないもん。

そりゃ、もう長いこと裕貴さんが好きだって気持ち、完全には捨てきれなくて。しかも、今の今まで、他の男の人といい感じにもなるような縁も皆無で。
だから、そういうこと……ずーっとないけど。

でも、人肌が恋しいみたいな淋しい女みたいに言われても! そんなんじゃないもん。


制服を脱いで、着替え終わった顔を小さな鏡に映しながら口を尖らせる。

ああ。また私、無謀な恋をしてるんじゃないんだろうか。

少し憂いた顔をして、ふと思う。

いや、でも、そうだとしても、一歩前に進んだのには変わりないんだから。
とりあえず、今日という日を楽しもう。

髪をシュシュでまとめると、笑顔を作って鏡を閉じると、急ぎ足で帰路に着いた。


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