恋愛ターミナル

「わぁ! お店みたい!」
「ふふっ。一応お店の人間だからね」


フライパンと一緒で、私の家にあるなんでもないただのお皿が、晃平さんが盛りつけるとオシャレに見える。

にんにくのいい香りが部屋いっぱいに広がると、色気より食い気といわんばかりに私のお腹が鳴った。


「あ、あまりにも……いい匂いだったもので……」


恥ずかしくて顔を赤くしながら小声で言う私の頭を、やっぱり優しくポンポンと撫でてにっこりと笑う。


「うん。オレも鳴りそう。食べよう?」


今度はお腹ではなく、胸がキュンとする。
向かい合って晃平さんの絶品パスタを食べ終えると、まるで恋人同士のような錯覚をおこしてしまいそう。

こんなふうに、もし毎日過ごせたら……幸せだなぁ。


「あ、そうだ」となにか思い出したように、晃平さんがその場を立った。
私に許可を得てからまた冷蔵庫を開けると、手に白い箱を持っていた。


「これ、残り物で申し訳ないんだけど、昨日店から持って帰って来たんだ。いやじゃなかったら……」


テーブルに置いた箱を晃平さんが開けると、そこにはケーキがふたつ並んでいた。


「嬉しいです! いただきます!」


まるで子供のように両手を上げて喜ぶ私を、優しい笑顔だけで応えてくれる。
お皿に乗せた、分厚いシフォンケーキをぱくりと食べると、口いっぱいに幸せが溢れる。


「どうしても、余っちゃうんだよね。不本意だけど、捨てるしかないから……」
「もったいないですね……。だけど、こんなふうに毎日お土産持ってきてもらっちゃったら、太っちゃいますねぇ」


フォークを口に添えたまま、宙を見て何気なく言った。


「はは。毎日? 食べれる? それなら持ってきてあげるけど」


そう言われて、ハッとした。
なに図々しいことを口走ったの、私!
あの言い方じゃあ、『毎日ください』って言ってるのと同じじゃない!
いろんな意味でほんと図々しいよ!


「や、すみません。忘れてください……」
「美味しいものとか好きなもん食べてたら、嫌なこととか忘れられるもんね?」


え――――。



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