恋愛ターミナル
「あ、でもオレ、ドルチェのほうはまだあんまり」
「え? これとか違うんですか?」
「これは別のスタッフ。この前亜美ちゃんに出したのも、ティラミスとそのシュクルだけ。盛り付けたのはオレだけど」
ふーん……そうなんだ。
晃平さんでも、まだ出来ないこと、あるんだ。
完璧な人だと思ってたけど、そうじゃないんだなぁ。
それが逆に嬉しく感じる私って、ひどいかな?
だって、なんでも出来る人を目の前にしたら、余計に自分自身に劣等感を感じちゃうから。
身近に勝手に感じて、嬉しくなって。自然と顔が綻んでしまう。
「……そっか。晃平さんが全部やってたんじゃないんだ」
「――亜美ちゃ」
晃平さんがなにか言いかけたと思ったら、携帯の呼出音が私たちの間に鳴り響いて空気が止まる。
鳴りやまないところをみると、電話。
私の携帯じゃなく、晃平さんのだ。
ポケットから携帯を取り出し、確認してたのをみて、「どうぞ」と促した。
すると晃平さんは、「ごめん」と言って、その場で横を向いて電話を取る。
「もしもし」
――誰かな。
席を外さずに電話に出たってことは、私がいても構わない相手ってことだよね。
友達かな。……裕貴さん、だったりして。
シフォンケーキにまたフォークを入れながら、ちらりと晃平さんの様子を窺う。
テレビもなにもついてない部屋は、自分が黙るととても静かだったことに気がつく。
だから晃平さんの電話の相手が、女性だということに気づいてしまった。