恋愛ターミナル
あの、料理してた手が。私の頭の上に置いてくれた手が、私の手を握ってる。
繋がった手から晃平さんの顔に視線を上げると、今まで見たような優しいだけの笑顔じゃなくて、ちょっとやんちゃな――ニッとした笑みで私を見下ろしてた。
「えっ。ちょっと、いつの間に――――」
いずみの言葉も最後まで聞こえないうちに、晃平さんに手をひかれて走り出した。
ちょ……ちょっと、これ、どういうこと?
どうして今、私、晃平さんと手を繋いでるの?!
「きゃっ」
しばらく走ったところで、私の靴が脱げて転びそうになったのを、晃平さんの手が阻止してくれた。
「ごめん。大丈夫?」
「――あ。はい……大丈、いたっ」
バランスを崩した体勢を立て直そうと足をついたときに、痛みが走った。
見てみると、無理して履いていた靴が合わなくて、踵が靴ずれを起こしていた。
少し血がにじむ踵を隠すようにして、笑顔を作る。
「あ、大丈夫ですから……」
「ウソ。足、見せて」
料理のときくらいしか見たことない、晃平さんの真剣な眼差しを向けられて、それ以上ウソを言えずに私は黙った。
観念して赤くなった踵を見せると、晃平さんが片膝をついて私に背中を見せた。
「乗って」
「え! いいです! それはちょっと……」
この街中で恥ずかしいし、なにより自分の重みが晃平さんにばれちゃう!!