恋愛ターミナル
「『結婚するまでは、同棲とかはナシで、健全に』って」
「……そ、それって――――」
しっかりは覚えてないけど、そんなようなことを言った記憶はある。
確か、結婚式(あの日)の帰り道――お酒も入ってたから、ぺらぺらと勝手に自分の話をしてたんだ。
え……? その私の話が、なんだっけ?
混乱した私の頭の中を察したのか、「ふ」と晃平さんが笑った。
「健全とか言われちゃったら、迂闊に手、出せなくて」
迂闊に手が出せない? それって、つまり……。
その理由(わけ)を考えて行きついた答えに赤面する。
私の赤く染まった頬をみて、晃平さんはニッと笑う。
「オレも好き」
両手で顔を包まれ、まっすぐに見つめられて、確かに言われた。
「ほ、ほんと……?」
晃平さんも、私と同じ気持ち? 全然いいところなんて見せたことないはずなのに、本当に私を選んでくれたの?
「本当。それより――」
私の左頬に触れている右手が、ゆっくりと動く。
その親指で、私の唇の輪郭を艶めかしくなぞりながら、魅惑的な声で言う。
「亜美ちゃんの『健全』て、どこまで?」
「えっ……んんっ」
唇の端を通り過ぎたと思った瞬間に、晃平さんの口が全てを覆った。
頭に手を回されて、腰を引き寄せられながら、どんどんと深くなっていく。
唇を割られて侵入してくる舌に、力が抜けて、思考能力も奪われる。
「ここまで?」
――もっとして欲しい。
そう感じてしまった私は、離れてしまったもどかしさで声が出ない。
「違うみたいだね」