恋愛ターミナル

私が物足りなさそうな表情をしてたのか、晃平さんはひとことそういうと、壁に押しつけられて、唇を奪われる。

今度はさっきとは違う、もっともっと情熱的なキス。
時折距離をおいては、妖艶の瞳で見つめられる。そして、角度を変えて攻めては私の奥に眠っていた快感を誘う。


「あ……んぅ……」


自然と漏れる吐息が、自分のものじゃないみたいで恥ずかしい。
それでもやめられない行為に酔いしれ、力が入らない手で必死に晃平さんのシャツを掴む。


「んんっ!」


するりと左腿を撫でられる感触に、思わず声を上げた。
晃平さんがピタリと動きを止めて、手を離した。


「あ……」


恥ずかしい。でも、して欲しい。

こういうときに、自分から『やめないで』って言ってもいいのかな。
そんなことを言っちゃったら、健全がどうとか言ってたくせに、って冷められてしまうかな。


伏せていた目を、ちらりと上げて晃平さんを見ると目が合った。
ぼーっとしていた頭で少しそのまま見つめていた私は、たった今まで口付けていたことを思い出し、慌てて視線を逸らした。


「その潤んだ瞳のワケは、オレが勝手に解釈してもいい?」


嬉しそうな、勝ち誇ったような。ちょっと意地悪な顔をした晃平さんを見るや否や、腕をひかれ、瞬く間に自分が晃平さんに抱き上げられていた。


「えっ、こ、晃平さ……!」
「オレの理想っていうのも聞いてくれる?」
「……え?」


こ、晃平さんの“理想”?


ひとこと聞き返した私を見下ろす顔がすごく近い。
でも、文字通り晃平さんの手の中にいる私には逃げ場なんかない。

目のやり場にも、どんな顔や言葉を出していいのかもわからなくて戸惑ってしまう。
その間に私は、まるでコワレモノを扱うかのようにベッドに降ろされていた。

座った体勢のままの私を、腰をひき、組み敷くと、じっと見つめて言う。




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