恋愛ターミナル
よーし。まだ早いからどこも空いててすぐ入れそう。
昨日梓とは中華食べて、夜は徹平と和食だったから……イタリアンあたりでもいっとくかな。
案内板を真剣に見つめ、パスタの写真が美味しそうな店に決めて歩きだす。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「ひとりです」
「ご案内いたします」
堂々と指で“1”を示した私を、ウエイトレスは案内する。
席へ向かう途中、ガラス張りの厨房が見えて、何気なく眺めながらついて行った。
並んで背を向け、料理しているスタッフの一人が、盛り付けのためか振り向いた。
「――あれっ」
声を出してしまったのは、そこにいる男の人に見覚えがあったから。
名前……なんだっけ。でも、誰かはわかる。いずみの式の二次会で会った人。
そして、今は亜美の彼氏になった人だ。
急に動かなくなった私を、小首を傾げて待つウエイトレス。
でも、名前を思い出すまで、気になって顔を見続けていた私の視線に気づいた彼は、不意に顔を上げた。
『あ』。そんな口をして、ガラス越しに彼は私に笑顔を向けた。
ぺこり、ととりあえずお辞儀をした私に、彼は『どうぞ』というように奥の席を手で示した。
わ……。この前はちょっと酔ってたし、まともに覚えてなかったからかもしれないけど、この人かっこいいかも……。
あの調理服でさらに2割増し。亜美、いいの捕まえたなぁ。
そんなことを考えて席につくと、少ししてから亜美の彼氏がやってきた。
「凛々ちゃん、いらっしゃい。一人?」
「あ、はい……えーと……」
「あ。ははっ。オレ、澤口晃平。一回会っただけじゃ忘れるよね?」
「……すみません」
あ、そうだ。『コウヘイさん』だった。
本当は、人の顔と名前を覚えるの、職業柄得意なんだけどな。
やっぱりあの時結構飲んじゃってたし、亜美の話もなんとなーく聞いてたとこあったからな。