恋愛ターミナル

「ただいまー……って、誰もいないか」


くたくたになって帰宅しても、徹平はいない。
でも、今日だけじゃないし、いつものこと。

そんな一週間は、早いような、長いような。
仕事が忙しいのは余計なことを考えなくていいからいいかもしれない。
でも、仕事上“家族”を見続ける私の頭から、自分の未来の家庭の想像がなくなることはない。

お風呂からあがると、不在着信。


徹平? そう思って見てみると、【亜美】。
亜美かー。ま、徹平なわけないよな。


髪を乾かさずにそのままソファにドサッと座ると、亜美の名前をタップして携帯を耳にあてた。


『もしもし』
「あーごめん。お風呂入ってた。どうしたの?」
『仕事遅いんだねぇ。お疲れさま』


事務職の亜美は、いつも定時きっかりに上がれるのだろう。
そこいくと私はほとんど残業。

日中も体を思い切り使うし、ずっと声も出しっぱなし。しかもお昼休みでさえ、園児とご飯で休めない私は、確かに疲れてると思う。


「もー疲れたよーほんと。ご飯作る気力すらない」
『そんなときなら外食でもいいんじゃない? あっ、そういえば、昨日晃平さんが凛々に会ったって言ってた!』
「ああ。そうそう。偶然ね」
『美味しかったでしょ? また私も行きたいなぁ』


私は肩に携帯を挟んで両手を空けると、缶ビールを音を立てて開けた。
それを一口グイっと飲むと、「はーっ」と息を吐いてようやく心も体も落ち着いた。


「亜美は家で作ってもらえんじゃん」
『んーでも家では私に作ってってお願いされるから……』
「はいはい。なに? この電話の用件はノロケ話?」
『ちっ違うもん!』


「違う」っつっても、自然と出ちゃってるよー。ラブラブオーラ。

まぁでも、親友だし、亜美はずっとそういうのなかったみたいだし。
やっときた“春”だから大目に見てあげるか。




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