恋愛ターミナル


そんな変わらない毎日を過ごし、明日は特別な土曜日。
基本保育時間が終わって、今日はおのこり担当じゃない私は職員室にいた。

明日と明後日は、家に持ち帰る仕事を最小限にするために、私はフルスロットルで動く。


「お世話になってます。新しいカタログ持ってきましたー、って、あれ。凛々センセ、今日怖くない?」
「なんですって!」


そこに現れた、教材メーカー担当の杉中(すぎなか)さん。
もう5年くらいの付き合いだから、お互いにこんなくだけた対応をする。

確か2つ上の杉中さんは、営業という仕事のせいか、とっても爽やかな笑顔に、気さくな人柄。
さりげない気づかいは大人の男性で、メガネの奥の瞳に打たれると、うっかりしてたら惚れちゃうって先生の中では有名な話。


「『怖く』はないでしょう! こんなイイ女捕まえて怖いなんて!」
「『イイ女』……?」


『どこに?』とでもいいたげな杉中さんは、わざとらしく手を額にかざして職員室を見渡した。


「たっ確かに、ほとんど化粧もしてないですけど! ジャージですけど! プライベートは違うんですから!」


大口をたたいたことに赤面しながら、補足する私。
でもなんか余計言ってて虚しい……。


「ふーん。それはぜひ拝んでみたいものだね」


冗談で嫌味を言った杉中さんの語尾に重なって、メールの着信音が小さく聞こえた。


――やば! 今日マナーモードにしてなかった!


いまさらなのに、慌ててカバンから携帯を取り出す。
いつもなら、メールの確認は終業してからしてるのに、画面に出てた名前が【徹平】だったから、ついメールを開いてしまった。


「――――」


そして、すぐにメールを見たことを後悔する。


「……凛々先生? どうしたの?」



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