恋愛ターミナル
私の顔色が変わったのに、杉中さんならすぐに気付いたんだろう。
さっきまでのふざけた声じゃなくて、心配そうな声色で私の顔を覗き込む。
「や……なんでもないですから……」
頑張れ、私! なにかいやなことがあったって、いつも園児に笑顔みせてるじゃないの!
同じように笑えばいいのよ!
心でそう自分に言い聞かせるけど、上手く神経が動かない。
笑えてる自信がない私は、俯くしかなかった。
「――うそでしょ、それ。俺でよかったら聞くよ」
運がいいのか悪いのか。
誰もいない職員室で、私は杉中さんだけというのと、一週間頑張ってきた金曜日というので張り詰めていた糸が切れた。
「……杉中さん、笑ってくださいね」
「それはどうかな。聞いてから判断する」
「――ほんと、くだらないことですよ。彼氏に明日の約束ドタキャンされたんです」
メールにはこう書いてあった。
【ごめん。先輩の都合で明日が合コンになっちゃって……しかも、仕事も終わらなくて。日曜だけでもいい? 映画も日曜行こう。ほんとごめん】
先輩に言われたらなかなか断れないとか、仕事だって予測だにしないことが起きるとか、そういうの、私にだって理解出来る。
だから普段、全然一緒にいる時間がなくても我慢出来たし、うるさく言わないでいた。
だけど、365日の中の、たった一日だよ?
そのたった一日くらい、先輩に頭下げて、仕事もどうにか振り分けたり出来ないの?
「……映画だって、明日までなのに」
ほんとは映画なんてどうでもいい。
明日と言う日を徹平と過ごすことに意味があったんだから。
「ふーん。でも仕事なら仕方ないんじゃない?」
「それもですけど、夜は合コンらしいですよ。付き合いの」
そうよ。よりによって、合コン。
彼女(私)がいるのよ? それなのにどうして職場の人も徹平に声掛けるのよ!
それにOKしちゃう徹平も徹平よ!
改めて考えると、ふつふつと怒りが湧いてくる。
携帯をマナーモードにしてカバンに投げ入れると、口に出したからか少し落ち着いて杉中さんを見ることができた。