恋愛ターミナル
「あ、なんかすみません。でももう切り替えて――」
「じゃ、映画俺と行こうか?」
「え?」
いつもはそれはもうにっこにことしてる杉中さんが、今は真剣な顔つきで私を見てそう言った。
そんなつもりで言ったんじゃないんだけど……。
でも、杉中さんは気を遣って言ってくれてるんだろうし。どうしよう。
「あー、あの、ほんと、気を遣わないでください……」
「いや? 凛々先生、好きだし。それにイイ女の凛々先生も見せてもらわないと」
「えっ……いや、それはどうかな……と」
さっき自分でハードル上げてたんだった!
だって、幼稚園(ここ)でしか会わないと思ってたし。まさかこんな展開になるなんて!
ていうか、「好き」とか言ってなかった?! ああ、そうか。男女の『好き』じゃないよね、うん。危ない危ない、一人で勘違いするとこだった!
「俺も明日ヒマしてるだけだから、凛々先生さえよければ」
どうやら本気のような杉中さんを前に、少し躊躇う。
ケンカはすれど、一応徹平と言う彼氏がいるわけだし。
それで男の人と二人で出掛けるって、いわゆるデートになっちゃうよね?
浮気心は一切ないけど、やっぱりそういうのって……。
そこまで考え付くと、断ろう、と思い口を開こうとした。
けど、さっきの徹平のメールがまた脳裏に浮かんできて、考え直す。
――なんで私ばっかり我慢しなきゃなんないの?
大体、あいつの理由のひとつも『合コン』じゃない!
杉中さんは仕事関係の人だし、この先もつきあうんだから、なにかあることもないだろうし。
たまに、私だって気分転換したい。
「……じゃあ、お願い……します」
少しも罪悪感がないってわけじゃなかったけど、今の私にはそのくらいしなきゃ、徹平を許すことが出来ない気がして、勢いでそう言ってた。