恋愛ターミナル


「えー! どんな服着てけばいいの?!」


翌日、土曜日の朝。
早々にいなくなった徹平とは昨日から口をきかず――といっても、私が先に寝てあとから起きただけだけど。

そんな徹平へのあて付けのように、誰もいない部屋で、久しぶりに服装で頭を悩ましていた。


徹平以外の男の人と二人で出掛けるなんて、もしかしたら初めてかもしれない。

どんな服を着て、どんな髪型にして、どんなアクセサリーをつけよう。
向こうはどんな格好でくるのかな? 

そんなドキドキ感が数年ぶり。

そういえば、徹平と初めてのデートのときも、こんなふうに部屋にいっぱい服を広げて悩んでたっけ。

あのときは、徹平が遅刻してきたんだよなぁ。
でも、ちっともイライラしなかった。むしろなにかあったのかとか心配しちゃったんだよね。


ぼんやり過去の徹平を思い出していると、鏡に写った時計が視界に入り我に返る。


「あ、やばっ。急がなきゃ!」


結局いつもと同じ、ショートパンツにラフなドルマリンのシャツで家を飛び出した。


待ち合わせ場所は映画館。
映画に付き合ってくれるっていう約束だったし。

そのあとのことは――深く考えないでおこう。なるようになるでしょ。


「こんにちは! すみません、待ちました?」
「いや。大丈夫」


職場でしか顔を合わさない人と、外で会うってなんか緊張するなぁ。

大体、普段仲良くしてはもらってるけど、お互いのこと必要以上に話したことないと思うから、どんな話題をすればいいのか見当もつかない。




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