恋愛ターミナル


「たまに映画っていいね」


映画を見終えて館外に出ると、目を細めて杉中さんは満足そうに言った。


「さて。メシにはずいぶん早すぎるし、どうしよっか」
「んー……どうしましょうね……」


もちろん、こんなシチュエーションに不慣れな私は、どんな提案していいのかさっぱり。

徹平だったら、あいつの好きなとこもわかるし、私の行きたいとこも知ってるから、順番に行きたいところをまわって歩く。
途中で気になるお店があっても、遠慮なくひきとめて付き合わせるし、自分を曝け出すってすごいラク。


「じゃあ俺の買い物に付き合って貰ってもいい?」
「はい。全然いいですよ。映画に付き合って貰っちゃったんで、そのくらいお安いご用です」
「『お安いご用』ってー! イマドキ言う? それも自信満々に!」
「い、いーじゃないですかっ」


ゲラゲラお腹を抱えて笑われると、ものすっごい恥ずかしいんですけど!
そんなにおかしなこと言ってないじゃん!


ふくれっ面を少し赤くして、私は杉中さんを睨む。


「もう! いつまでも笑ってないで、どこ行くんです?」
「あ? あーごめん。凛々センセ、可愛い顔して言うこと古いんだもん」


それって、褒めてんの? 可愛い顔とかさらっと言ってるけど。そういや昨日も「好き」とか簡単に言っちゃうし。
やっぱ、話し上手な人はそういうこともさらりと口に出せちゃうんだなー。


「さ、ひとしきり笑ったし。行こうか」
「笑い終わり待ちですよ」
「はははっ。ここの3階にメガネのショップあるからさ。俺メガネ買い変えたかったんだ」


ダークブラウンの縁のメガネを、両端を抑えるように押し上げて、杉中さんが言う。


そういうさりげないメガネを使った仕草って、萌えるんだよね。
あいにく徹平は両目とも2.0。メガネなんか疎遠だわ。
ああ、でも、最近はダテメガネっていうのもあるのか。あいつのメガネ姿……想像できないや。


ショップについて、ズラリと並ぶメガネを眺めながら、こんなときでも無意識に徹平を想う。
こんなのが似合うかな? なんて、黒縁のメガネを手に取って苦笑する。


「……なにしてんだか、私」




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