恋愛ターミナル
今日は記念日なのに。
9年前の今日、あの、この間夢でみたフェンスの向こうから、徹平は走ってきた。
すごく遠くにいたはずなのに、私を見つけて全速力で。
ああ、だって、視力いいんだもん。数百メートルくらいなら見えるのかも。
クラスは隣で、そんなに接点はなかったのに。
反れたサッカーボールを取りに走ってるのかと思えば、私の前までやってきて。
「凛々センセ。こっちとこっち、どっち好き?」
「はいっ!」
背中から突然の問いかけに、思わず背筋を伸ばした。
そうだった。今、杉中さんといるんだった。
ぼんやりしてたら失礼だし、あんなやつのこと考えるのもシャクだし。
今に集中よ、集中。
「あ、えーと……すみません。あまりメガネに詳しくないから……」
「ん? いや、インスピレーションでさ。どっち?」
「んー……こっち? かなぁ」
私はレンズの形が四角っぽいものを指さした。
「こっちのスクエア?」
「あ、やっぱりこの――」
もう片方は、上はフレームがないタイプ。これ、なんていうんだろう?
名称がさっぱりわからない私に、杉中さんがそれに気付いて簡単に説明してくれる。
「これ、アンダーリムっていうフレームの種類。俺みたいに細長い顔は、こういうのかけたらちょっと中和されるっていうか」
「へえー。やっぱり人それぞれ、合うものがあるんですねぇ」
「うん。凛々センセなら、こんなのがいいかな」
すっと長い指で拾い上げたのは、落ち着いた赤のフレームをしたメガネ。
レンズは一般的な……たまご型?
「こういうのかけたら、また印象変わるよね」
そう言って、自然にそのメガネを私に掛ける。
うわ、うわっ! な、なんか近いしっ。それに、指が目元に触れてるし!
しかも前髪まで整えられちゃって!!