恋愛ターミナル
「……せ」
豆腐も、ドレッシングが特別なのか、家とは違う味がするんだよねぇ。
「凛々センセ!」
「へっ。は! あ、ごめんなさい!」
いつの間にかメニューを閉じて、ジョッキを手にしてる杉中さんが私を何度か呼んでいたみたい。
慌てて私もビールの入ったジョッキを手にしてぶつけ合う。
その流れでひとくち飲むと、いつもよりちょっと苦く感じた。
そんなビールの違いを感じていると、仕切りを挟んだ向こう側でなんだか盛り上がってる声が聞こえてきた。
……なんだか楽しそう。
そういえば、亜美と電話してたときに断っちゃったけど、亜美と梓は今頃どっかでご飯食べてるのかな?
「凛々センセは、そろそろ落ち着くんじゃないの?」
「へっ?! な、なにがですか?!」
「いや、結婚」
「けっ!! け、結婚?! いやー……まぁ、そうなりたい気持ちはありますけど……でも、ねぇ? 私だけのことじゃないんで……」
未だになにも言われたことないし。
それに……。
自分の手に視線を落とす。
なんのアクセサリーもつけてない手。
そりゃ、職業柄、マリッジリング以外はつけることは出来ないけど。
それでもなんかひとつでも欲しい。
ネックレスでも、ピアスでも、ブレスレットでも。
一番は、指輪を貰ってみたいけど……。
そういうプレゼントすら今まで貰ったことない。まわりはみんな、彼氏から素敵なものを貰ってるのに。
高価なものじゃなくてもいいの。チープなものでも、徹平に貰えることに意味があるんだから。
そういうのって、催促して貰ったって嬉しくないし。
いつになったらあいつはこの私の気持ちに気付いてくれるんだか!
つい、不満が溢れて、ゴンっと乱暴な音を立ててジョッキをテーブルに置いてしまう。
ハッとして、ヘラっと杉中さんに笑顔を作った。