恋愛ターミナル

私の力ない手はあっけなく押し戻されて、引き寄せられる。


再び見上げたときの杉中さんの顔が、さっきよりも近い。ううん、近づいてきてる。
――キス、される。


そのゆっくりとした時間に、頭の中で色々なことを考える。


別にいいか。このまま流されても。
どうせ追い掛けても来ない徹平だし、所詮その程度の『愛』なのよ。

昔は私のこと、「好きだ、好きだ」って言ってくれてたけど、やっぱり長年いたら冷めるのかもしれない。


でも、私は――……?
私は、8年経った今でも、徹平のこと……。


確かにこんなふうに、私の気も知らないで合コンだ飲み会だって、貴重な休日を返上していくし、それに対するお詫びが牛丼だったり、居酒屋だったり……。
だけど、さりげなく荷物を持ってくれるとことか、私の好きなものを用意してくれるとことか。

いつも、先に寝てる私に布団を掛けなおして、頭を撫でてから寝てるとことか。

目尻にしわを寄せて、「凛々」って呼んでくれるあの徹平が――――好き。


「――ごめんなさい!」


今度は思い切り、杉中さんを押し返した。


「……あいつがどう思ってるかわかんないけど……でも、私の気持ちは変わってないみたい」


私の8年間、ほとんど徹平でいっぱいで。そして9年目も10年目も、ずっとずっと。徹平がいない未来って想像できなくなってる。

私の想いを聞いた杉中さんは、ジャリッと音を立ててまた近づいてくる。
そして、私の顎を持ち上げて目があったときに言った。


「――それでも、彼に結婚の意がないって言ったら? 俺は真剣に結婚考えて凛々先生といたいと思うよ」


ぐらつく足元。目眩しそうな現実。
一度しかない人生だもの。やっぱり結婚したい。でも、それを好きな人が叶えてくれなかったら……?


私の選択は間違ってるの? 
自分の幸せが、どこにあるのかわかんない。




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