恋愛ターミナル

意気揚々と立ち上がっていた私は、力なくストンと座って、ぼそぼそと梓に言う。


「……保留」
「へー。じゃあ、杉中さん“脈アリ”だ。いいじゃん、そんなに結婚したいなら、その杉中さんにしちゃえば」


淡々と結論まではじき出す梓に、どうやっても同調できない。
そんな簡単なことじゃない! と思って、ついムキになってしまう。


「梓は、今までの彼氏が彼氏だからこういう悩みないのかもしれないけど!」


完全に八つ当たりだし、梓は関係ないことはわかってるのに、感情をコントロール出来ない。
だけど、そこまで言ってしまって後悔しても遅い。

気まずい気持ちで、恐る恐る梓の様子を窺った。
すると、梓はじっと私をみて、「ふ」っと淋しげに笑う。


「まーねぇ。私は結婚に興味ないし。だから、利害が一致するのよ。妻子持ちと」


顔を上げ、ビールが流れると、梓の細く白い首が上下に動く。
憂いな表情をする梓は、同い年と思えない。


今、彼氏がいないとはいえ、梓のしてることはいつも非道徳的だ。
でも、それを私に止める権利はないし、逆に私の結婚願望も頭から否定されたこともない。

そんな対極の考えの持ち主だからこそ、その意見を聞く価値もあるのかもしれない。


「冷たい、って思うかもしれないけど、私にしたらそうなのよ。そんなに結婚したいなら、結婚できる近道を選べばいいじゃない、って」


梓はそういうと、2本目の缶に手を伸ばした。





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