卑怯な私




「なんかあった?」



奥に座った遊人の隣に腰を下ろすと、直ぐに問い掛けられた。



『なんかあった?』なんて白々しい。



「どうして?」



私も素っ気なく返した。



映画はまだ上映していなく、周りがガヤガヤとしている。



その為、私達の会話は翔樹達に聞こえていないだろう。



現に、翔樹達の会話が聞こえないのだから。



「優子が翔樹と一緒に座らないなんて珍しいから」



「翔樹が優希のことが好きで、気利かせてって本人から言われちゃった」



わざと明るく言った。



でないと、今まで我慢していた涙が零れそうだったから。



「それに、押してダメなら引いてみろって言うじゃない?」



これは一か八かの賭け。



これで振り向いて貰えないなら私は“ただの幼馴染”だったんだ。
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