ミステイク ラブ
「ありがとっ」
ニッコリと笑った北人の笑顔が眩しい。
キラキラ輝いて見えて、あたしには遠く感じた。
「北人!そろそろ試合再開するって」
澄んだ声が、あたしの心にひどく突き刺さった。
「華(はな)…。わかった」
あたし、なにしてんだろう…。
はやく脈打つ心臓が、壊れそうなくらい痛む。
ズキズキして、痛くて痛くて…。
「じゃあ俺、戻るよ」
そう言って走って行った北人の姿が、いつも以上に…遠く、遠くなった気がした。
「華!」
あたしの代わりに別な人を呼ぶ声に、苦しくなる。
「何してたの!?」
楽しそうに話して、笑っている姿なんて見たくなかった。
「やっぱり春日くんと木月さんって絵になるよね。さすが美男美女って感じ?」
嫌な言葉って、聞きたくない言葉って…こういう時にかぎって耳に入る。
「あの2人って付き合ってるんだよね?」
そんな言葉、聞きたくない。
その一心で、あたしは逃げるように高校を出た。
「沙智!?」
微かに出て行く一瞬に、北人の声が聞こえた。
でも期待なんてしない…。
辛くなるだけだから。