ミステイク ラブ

苦さも全部、スキの印

賑やかなグラウンドの端。


こんなにも人が来ているなんて思ってもみなかった。


しかも聞こえる声なんてすべて黄色い歓声で……。


「北人」の名前ばかり。



「春日くんかっこいいー!」



なんて声が聞こえて、ハラハラする。


試合なんて見ていられないくらいに、ドキドキして困ってるあたしがいる。



高校が違うから、北人がモテてるなんて知るわけもなかった。



「かすがくん、か…」



呟いてみても、歓声にあたしの声はかき消される。


なんとなく優越感みたいなのを覚えるの。


北人の事を呼び捨てで呼んでるのって、あたしだけなのかなって。



「沙智!」


「えっ…!?」


あたしの方に向かってくる、青色のユニフォームを着た北人。



「来たんだ」


さっきまで賑やかだったのに、少し静かになった。



「…うん」



こんなに人がいるのに、あたしが来てるってわかったね。



「……はい、これ」



北人から目を離して、カバンの中から包みを1つ出して差し出した。



「…なにこれ?」


「…弁当」



我ながら単純だと思う。


なにか作って来いって言われたから、弁当作ってきたなんて。


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