ミステイク ラブ
「お前、なんで玄関から入らないでベランダ越しに来るんだよ」
北人の家のベランダに足をおろしたと共に言われた言葉。
「……なんとなく」
まさかベランダから行ったら北斗にすぐに会えるし、手を貸してもらえるからなんて口が裂けても言えない。
「なんとなくかよ」
ため息をついた北人は、眉間に少し皺を寄せた。
「うん。ほかに理由なんてないよ」
自分の言葉を後ろめたく思って、北人と目が合わせられない。
「あっそ」
そんなあたしにお構いなしに、そっけない態度の北人にやっぱり恋愛対象になんて思われてないなあって思う。
手招きをされて、あたしは北人の部屋に入る。
ユニフォームに、テストの答案用紙に、適当に脱ぎ捨てられている制服に北人の部屋に来たんだなあってあたしは安心する。
「適当に座ってろよ。なんか飲み物持って来る」
いつもこんな調子。
お客さんじゃないのに、変に気を使っていろいろとしてくれる北人。
そんな北人に頼りきって、離れられなくなっているあたし。
「はあ…」
盛大なため息をついたあたしは、北人のベッドにダイブした。
微かに残っている北人の体温に、胸がギュッと締め付けられる。
こんなに近くにいるのに、手が伸ばせないんだ…。