ミステイク ラブ
ギュッと握っては開いた手に、寂しさが募る。
「ただの幼馴染」なんて関係、これから先は繋がりがなくなるのはよく知ってる。
北人があたしじゃない子の手を取るのなんて、さほど遠くない未来に簡単に訪れるんだ。
傾いている夕日は、部屋全体を真っ赤に染める。
ずっと今の時間が続けばいいのに。
未来なんていらない。
「お前、なに人のベッド占領してんだよ」
カチャカチャとグラスの重なる音に、ドアの方を向くと北人がジュースとお菓子を片手にドアの前に立っていた。
こういう時に手が震える。
怖いなって、北人の傍にいられなくなるのが近いんだって実感するから。
「ほら。お前の好きなオレンジジュースに、チョコレート」
ズイッとあたしの前に出して、満足げに笑った北人に
「…ありがとう」
顔を上げずに、俯いたまま呟いた。
「っ…おう」
驚いたような北人の声に、心臓がドキドキ言っている。
変な奴だって思われた?
珍しい事だって思った?
あたし自身もすごく驚いている。
こんなに素直に言葉が出たのは久しぶり。
でも動揺してるなんて悟られたくないあたしは、コップの淵に口をつけた。