ミステイク ラブ


でも失恋決定で、本人を目の前にして「好きな人いるよ」なんて言う勇気、あたしにはない。



「北人が素直に答えるのが悪いんでしょう?」



ケラケラと笑ってみせても、北人の目つきは変わらない。



「素直もなにも俺はっ…」


「北人ー?沙智ちゃん来てるの?」



玄関から聞こえる北人のお母さんの声と扉の閉まる音が、北人の言葉を遮る。



「北斗…?」



続きはなに?



意味のあるような口ぶりは、あたしにいけない期待を持たせるんだよ。



「ま、好きな奴できたら教えろよ?」



北人の言う事すべてに、体中の感覚がズキズキと痛んで泣きそうになる。



「北人に教えるわけないでしょう?」



ツンと横を向いて言うあたしに、北人は微かに手を伸ばしてまた引っ込めた。



「なに?」


「明日さ?練習試合あるから、久しぶりに来いよ」




あたしと目を合わさない北人の顔は、ほんのりと赤くなっている。



夕日に照らされているからか、本当に赤いのかはわからない。



でも、練習試合来ないかなんて初めて言われた。



驚いて何も言えない反面、嬉しくて早くなる心音。




「…行く」



それだけ言うと、北人は嬉しそうにはにかんだ。


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