飛ばない蝶は、花束の中に
ママは、電話を掛けた私に一瞬、押し黙ったように息を止めたけれど、涙混じりの声で、いつものようにまくし立てた。
どうしていきなり!
心配したんだから!
行き先くらい書き置いて行きなさい!
ちゃんとそこにいるのよ!
日本語の混ざるドイツ語で、そんなような意味の事を言いながら泣き出したママに、罪悪感を持たなかった訳ではないけれど。
おかしなこと言ったりして、困らせないのよ!?
………おかしなこと?
何がおかしいの?
私がお兄ちゃんを好きな事?
「……ママ、言わなきゃ伝わらないじゃない」
ママが、パパに。
“寂しい”って言えなくて、いつもパパが帰った後、少し泣くのを、見て育った。
そんなのを見せておいて、言うな…なんて。
伝えるな、なんて。