飛ばない蝶は、花束の中に


何ですか?
と言うよりも。
お待たせしました、に見える雅の目を前にして。

私は口を開きかけて、閉じた。





「……」


雅は急かすでもなく少し小首を傾げる。



「…お部屋、行きましょう?」


ココア持って行っても良いですか?と、雅は少し楽しそうに、小さく囁いた。




「雅ちゃん、洗濯物は乾燥機かけとく?」

「あ、いえ…置いておいてください」

乾燥機、駄目なの混じってるんで、と雅は“タカノ”にも敬語を使う。



ココア淹れて行くので、部屋で待っててください、と。

雅は私にも、敬語を使う。



割れた鉢は、ひとまとめ。

明日、帰りに綺麗な鉢を買おうね、と笑い合う“タカノ”と雅。




お兄ちゃんは。

洗った手を拭きながら、煙草を咥え、私をじっと。

見ていた。




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